子どものこころを開くこんな一言 第7回

「困ったな。どうしよう。」(3)

 

その2
さて、この親子のその後のエピソードに移ります。

ケイちゃんは、ずっと教室に入れずに相談室登校をしていたのですが、2週間後ぐらいから教室にちょこちょこ入れるようになりました。

不思議に思ったヤンママは、本人に尋ねてみました。

「なんで教室に入れるの?」

すると、本人は次のように答えたと言います。

「お母さんがよくほめてくれるから」

これを聞いたお母さんは本当にびっくりした、といいます。そういえば、最近、言い合いになることがめっきり減ってきたことや、通っているスイミングスクールで上の級に上がったこと、担任の先生から花丸をたくさんもらえるようになったことなど、ほめることが多くなってきたそうです。

宿題に出された音読も、以前より読む文章が長くなってきたといいます。きっと自分に自信がもてるようになってきたのでしょう。

お母さんも気をよくしてか、最近ではずい分「ほめ上手」になってこられました。「ほめ上手は自信持たせ屋さん」といいますが、まさにその通りです。

私は、担任の先生とも相談をしていますので、お母さんの奮闘ぶりや本人が頑張っていると聞き及んだことなどできるかぎり先生に伝えました。つまり情報の共有をし、環境を調整してゆく役割を担ったといえそうです。

この春、ケイちゃんは2年生に進級しました。担任の先生は持ち上がりです。

お母さんはまた、子どもに尋ねました。

「何で教室に入るようになったん?」

すると、

「当たり前やん。(教室に)入るの決まってるやん。」

そう、ケイちゃんにとって、教室に入ることが当たり前になったのです。いつまでもこだわっているのは、われわれおとなだけなのかもしれません。いいサイクルで親子のエンジンが回ってきている、と強く感じました。

たった5回の面接でしたが、お母さんとおばあちゃんは、次のようにしみじみと語られました。

「この子には、この子なりの間(ま)とスピードがあるのですね。そのことに本当に気がつきました。」

ケイちゃんから子育てママへの、最高の贈り物になったに違いないでしょう。

 

(池島徳大元奈良教育大学教授)