子どものこころを開くこんな一言 第9回

「いつも私ばっかり言われる」

その2
①「何でこんなことをするの!」と、子どもを一方的に責めないこと。

特に、担任の先生にはこの子の味方になって欲しいことと、友だちの前であまり強く叱らないことを頼みました。

責め続けると、「どうせ私なんか悪い子だ」と、自己否定のエンジンがかかりはじめるのです。

まわりの子どもたちに、「この子は、いつも先生から注意を受ける悪い子だ」というレッテルを貼られかねません。

肯定的な関わりでそれを阻止しなければなりません。

これは、キューちゃんだけの対応ではありません。

どの子の場合も同じです。

キューちゃんの心の中には、もうすでに自分を否定的に見るエンジンがかかり始めたかもしれません。

腹痛などの身体症状が現れはじめていますから、深刻な事態になってきているといえます。
②何らかの欲求不満を他人に危害を加えることで発散しているかもしれない、と考えてみることを提案しました。

そして、前回述べた“CCQテクニック”:「穏やかに」「近寄って」「静かに」の態度で話をよく聴いてやり、素直に話してくれたときや素直に謝ったときには、「すかさずほめる」ことをすすめました。

案の定、しばらくしてキューちゃんは、母親に「(これまでお母さんは)私のことを全然かまってくれなかった」と不満を述べるようになりました。「どうしてそう思うの?」と、怒らずにやんわりと聞いてやると、心に引っかかっていたことが分かりました。

3年生になったときに、みんなが新しい座布団を持って来ているので、自分も新しい座布団が欲しいと母親に言ったのですが、取り合ってもらえなかったらしいのです。そのころ母親はパートの仕事で忙しく、子どもの要求に応えてやれなかったことが判明したのです。

「私なんかもうどうでもいいわ」という気持ちにさせていたことが分かったのです。お母さんは、素直に、「気づかなくてごめんね。」と詫びました。

そして、子どもの気持ちに応えてやるために、「一緒に寝て欲しい」というキューちゃんの要求に応えてやることにしました。

でも、困ったことが起こりました。約束した9時に子どもと一緒に寝るのですが、ちょうどそのころ姉が塾から帰ってきて夕食の世話をしなければなりません。

食事の後片付けもしなければなりません。途中で起きることはとてもつらいことです。

でも、お母さんは、紆余曲折はありましたが、忙しいなかでも頑張って続けられました。

そのころから、「ママー」と赤ちゃん言葉でぎゅーと抱きつきに来ることが増えてきました。

あるとき、お母さんは、「この後、どうしても後片付けをしなければならないので、しばらく一緒に寝るけどその後は起きてもいい?」とキューちゃんに聞いてみました。

すると、受け入れてくれるようになってきたのです。

そんなときは、うんとほめてやったといいます。

布団のなかで待ってくれていたときも、「よく待っていてくれたね。」とほめることを忘れずに関わられました。

1ヶ月ほどたったある夜、布団のなかでキューちゃんは、「学校から帰って来たときに、(私に)『お帰り』といって欲しい。」とお母さんにお願いしました。

これを聞いたお母さんは、ご自分の幼少の頃とだぶらせながら聞いていたのですが、涙が止まらなかったといいます。キューちゃんの願いは、お母さんも小学生の頃に抱いていた気持ちだったのです。

寂しい気持ちを誰にも言えずじっとがまんしていた、あの頃のことをお母さんは思い出したのです。

さて、お母さんによると、キューちゃんはこれまで抱っこして欲しいなどとあまり要求せず、「あっさりしている子やなあ。何でやろう」と思いながら育ててきた、と言います。

しかし、今、キューちゃんは、スポンジのように気持ちを吸い取ってくれるお母さんに安心感を得て、本音を言うことができるようになったのでしょう。

お母さんもわが子の幼い気持ちが分かり、素直に聴けるようになったといいます。

最近では、ずいぶん気持ちがすっきりとしてきたのでしょう。とても明るくなり、自分から嬉しそうにぺちゃくちゃしゃべるキューちゃんになりました。

 
目も輝いています。問題行動は影を潜め、学校でも叱られることがめっきり減ってきました。

学校からは、キューちゃんの行動がどうして改善されたのか教えて欲しいという電話を頂戴しました。嬉しい限りです。

今回もかなり字数オーバーしました。このへんで終わります。では。

 

(池島徳大元奈良教育大学教授)