学校安全と危機教育 第9回

危機対応チームにはモデルが必要

その1
日本の学校での危機対応チームの組織の組織化とその役割分担については、私の考えたモデルで説明したいと思います。

文科省は、各学校ごとに危機チームを組織化するようにアドバイスしていますが、日本の場合には、校務分掌にうまくのせることが1つの方法だと思います。

学校現場の管理職の経験から言わせてもらえれば、校務分掌に乗せる私のモデルのような形が望ましい気がします。

危機対応チームの組織のトップには教育委員会を位置づけ、教育委員会は学校への指示と支援、行政機関への連絡と支援要請を行います。

学校の管理職は学校内の統制と指揮、教育委員会や学外の警察などへの支援要請、マスメディアへの対応、危機対応の経過を記録します。

この記録を取ることはとても大切です。

危機が起こったら、時系列に沿って、何時どこで事件が起こり、どの先生がその場に立ち会い、どのような対処をしたのか。警察には、いつ連絡し、救急車が何時に来て、負傷者が何人だったのかという確認などを記録します。

そのような危機対応の経過の記録です。

これは、今後、とても重要になって来ます。

ご存じのように、学校の説明責任の問題から、学校で事件・事故が起こったとき、教職員は、その事件・事故に対して、最大で最善の対応をしたという実証記録を提示しないと、学校の責任を問われかねません。そういう時代です。

日頃から、特別に「危機」を意識しなくとも、教室やグランドで、ちょっとした出来事があったら、習慣として、全ての教師に発生した時間とその出来事の内容の簡単なメモを取ってもらうのです。

メモには、児童の名前とどこでケガをしたか、どのような対応をしたかといったことを簡単に記録しておきます。

そのような習慣が身についていれば、特に危機が起こったからといって、特別なことをすることにはならないと思います。

この習慣づけは、管理職が日頃から気を付けておき、出来事に対する記録をきちんと保管しておきます。

この記録に基づいて学校が対処した内容を公表することは、これからの説明責任の時代に非常に大事な課題だと思います。

危機チームでの管理職の役割には、教職員の健康チェックも含まれます。危機が起こると、教職員は児童・生徒の面倒をかなり見なくてはならなくなります。

それで、教師が過労でまいってしまう状況が起こります。管理職は、このような教職員のバーンアウトを防がなくてはなりません。

事件・事故が一度起こると、事件が一応治まった段階で、教師にいろいろな問題や2次被害が起こったりするからです。

長崎県佐世保市の小学校での事件でも、担任が学校に出てこれない不登校状態に陥ってしまいました。

他の事例では、ある事件が起こり、担任が責任を感じて行方が分からなくなったことがあります。

数日すると、その先生が自殺していたという事件も過去にはありました。

教職員の健康チェックとケアは、管理職の大きな責任です。

危機チームでの生徒指導担当の役割は、児童生徒への対応、危機現場での実践的対応、警察や補導センターとの連携を図ることです。

学年・学級担任は、学年・学級の安全の確認と対応、保護者との連絡、教室での心のケアを担当します。

教務は、管理職の代理と補助を務めます。翌日の授業を休校にするか、授業をするとすれば、どのような授業にするかについて、管理職と相談して決めなければなりません。

このほかにも、保護者会をいつ開くかということも大切な役割です。

事件・事故が起こったら、できるだけ早く保護者会を開くことがポイントです。

保護者に報告し、保護者の理解と支援を要請します。

保護者会の開催は、管理職の指示のもとに、教務担当者が責任を持って実施することが大事です。

進路指導・図書・事務担当の役割は、教職員間の連絡、電話番などの補助に徹することです。養護・保健・教育相談・カウンセリングの担当者は、心身のケア、負傷者の搬送などを行う責任があります。

その2
学校や地域を巻き込んだ危機事態になると、学校だけでは対応できません。

ですから、学校、教育委員会、教育事務所を中心に、地域の警察署、消防署、警備保障会社などの機関との連携を組織化することが必要になります。

年に1回か2回このような、学外の危機支援機関と学校の危機対応チームとのミーティングを開きます。

例えば、長期休暇を前に警察と保護者が、青少年の長期休暇中の補導などの非行対策について話し合うことも考えられます。

これに限らず、もっと、学校危機という1つのテーマで、地域のネットワークをつくり、危機が起こったときに支援要請できる関係づくりが望まれます。

私が、提案したいことは、各教育委員会に、学校危機を専門とする教育主事を1人配置することです。

学校危機の専門的な学問というのは、先ほどの危機介入に始まり、最近ではかなり進歩してきています。米国ではそのような専門家がかなりの数養成されています。

ですから、学校の事件・事故、災害に対応する専門家としての教育主事を1人置き、管内の学校にいろいろな事件・事故が起きたり、学校の要請があった場合に派遣される仕組みをつくっておくのです。

派遣先では、支援活動や事件・事故の解決にいろいろとアドバイスします。

教育委員会が、このような体制づくりを進めていくことはこれからの課題だと思います。

兵庫県を例に取ると、大震災の教訓から、教職員の中に、「アース」という自然災害時の復興専門教員がいます。

教職員の中から、年間何度か研修を重ねながら、専門職員を養成するプログラムがあります。

「アース」を1つの参考にしながら、もっと幅広くいろいろな事件・事故、災害を含めて、学校の危機に対応できる専門家が身近にいて、我々はいつでも要請できるような体制をつくるべきです。

しかも、その中心に、近辺の学区内の支援機関とのネットワークをつくっておきます。

そうすると、学校も非常に心強い。いざ何かあったら、支援機関に支援を頼むことができます。

(上地安昭元兵庫県立教育研究所・心の教育総合センター所長)