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教育・子どもの25年史 第8回

牟田武生

80年代ひきこもってしまった子ども達の多くは、中学3年生で原級止めされ、そのまま 登校拒否を続け、16歳になった時点で除籍されるケースもあった。

除籍処分を受けると、中学を卒業していないので、高校には行けず、就職もできなか った。そのため、夜間中学か通信制中学に転校する以外方法はない。

しかし、ひきこもっている子どもの中にはそれらのハードルも高い子もいた。そのよ うな子は、就学猶予免除者のための中学卒業検定試験を受けさせてもらえるように関 係機関に教育配慮をお願いして歩いた。

このような状況では、当然、教育熱心な親や先生であれば、子どもを何とか学校に行 かそうと“登校刺激”をした。

追いつめられた不安や不信感が強い子どもは、自分のこころが壊れるような気がして、 自分を守るために激しい家庭内暴力をふるった。そのため、登校拒否の問題よりも家 庭内暴力の方が問題になっていった。

その当時、いじめでも登校拒否でも、大人達の認識はこころの問題よりも、子ども達 が起こした行動や行為について、どう対処していくかが主であった。

しかし、92年(平成4年)文部省初等中等教育局は登校拒否(不登校)についての基本 的な認識を転換させた。

『登校拒否問題については、これまでは、一般的に、登校拒否となった児童生徒本人の 性格傾向などに何らかの問題があるために登校拒否になるケースが多いと考えられがち であった。
しかし、登校拒否となった児童生徒をみてみると必ずしも本人自身の属性的な要因が決 め手になっているとは言えない事例も多く、ごく普通の子どもであり属性的には特に問 題もみられないケースも数多く報告されている。
個々の登校拒否のケースについてその原因・背景を分析すると、学校、家庭、社会の様 々な要因が複雑に絡み合っていることが多い。
具体的には、例えば学校生活に起因するものでは、児童生徒が友人関係や教師との関係 で悩んだり、学業不振などのより学習への意欲や興味・関心を失ったり、学校の指導方 針や校則等になじめなかったりしている場合などがある。また、家庭が、教育は学校が してくれると考えて、子どものしつけなど家庭でなすべきことなども学校に任せようと するなど、学校に過剰な期待を寄せる傾向も見られる。
そのうえ、様々な要因により子どもを取り巻く家庭や地域社会の教育力の低下していく 中で、幼少期から子どもがたくましく健やかに成長する教育基盤が脆弱になっていると いう背景も指摘されている。
更に、社会においても学歴偏重等受験競争をあおる風潮などが学校や親に不安感を与え ており、それらが日常生活の中で子ども自身にプレッシャーやストレスを与え、将来へ の不安感を感じさせ、学習への意欲や将来への希望を失わせてしまったりしている、と いった要因も指摘されている。
このように登校拒否問題は、学校や家庭、更には社会全体にも関わっている問題であり、 登校拒否は特定の子どもしかみられない現象であるといった固定的な認識でとらえるの ではなく、現代の子どもに対する新しい児童生徒観を基本として総合的な角度から問題 を認識し、指導・援助していくことが必要と考えられる。』登校拒否(不登校)問題に ついて学校不適応対策調査研究協力者会議報告、登校拒否問題に対する基本的な認識、 求められる登校拒否問題の認識の転換より

この時、初めて、子どもの側に立つ、子どものこころを大切にした大変意義のある歴史 的な施策だった。経済的にはバブルが弾けて夢が砕け散ったが、時代は“こころの時代” に変わったように見えた・・・。

2005.8.19

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ご協力いただいている執筆者の略歴:牟田武生(むたたけお)

牟田武生(むたたけお) 1947年生まれ。72年に民間の教育相談機関である教育研究所を設立し、不登校を含めた 教育問題の相談・援助活動に取り組んでいる。現在、 NPO法人教育研究所(横浜市港南区)理事長。91年に教師・カウンセラー・児童相談所の相 談員等不登校にかかわる専門家を対象にした研修機関として不登校問題研究会を設立。元NHKラジオ「子どもと教育電話相談」相談員、不登校問題研究会代表幹事、元文部省 「不登校の実態に関する調査」検討委員会委員。
主な著書:『ひきこもり/ 不登校の処方箋 増補版』(オクムラ書店)、『すぐに解決!子どもの緊急事態Q&A』 ( オクムラ書店)、『ネット依存の恐怖』(教育出版)など。