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軽度発達障害の子どもの支援 第9回

どのようなことでも誉めるという姿勢

東京のある小学校の通級指導教室に非常にすばらしい先生がいます。この方は、「何でも誉めます。どんなことでも誉められます」と宣言されています。

こんな場面がありました。

子どもが信号を無視して横断してしまった。

もちろん先生は注意しました。この子たちに注意するときは、短くピシッとやらなくてはだめなのです。

しかし、注意をした後に、先生は「でもお前はね、左右をよく見て、車が来ないのを確かめて走っていった。そこは偉い」と言ったそうです。

内容はこれで良いのか分かりませんが、先生はとにかく、どのようなことでも誉めるという姿勢で接しています。

子にはいくつか問題行動があるわけですので、それに対しては、その中から、改善しようとする目標を1つに絞ります。注意や叱責の対象を限定し、このことについてはきっちり注意をする、怒るということです。

ために、改善すべき行動のチェックリストを作成するということが必要かと思います。何もかもとやろうとすると、全部だめになるので、他のところはある程度放っておいて、このことについてはきちんととやりましょうということを目標にします。

教育の立場から、薬物療法について述べたいと思います。

保護者の方々は薬物に対して抵抗が大変大きいことがあります。しかし、有効な場合が多いので、視野に入れておくことも必要だと思います。担任が薬物療法を直接勧めると、トラブルに発展する例がよくあります。

そこで、例えば、市の相談室や教育センターの教育相談室で相談しながら、そこから受診を勧める方がいいと思います。

学校側で、どうしても病院などを紹介する場合には、担任ではトラブルになる可能性もありますので、管理職がワンクッションとなり、話をするのがよいと思います。

私は「教育関係の相談」が最初にあり、そこから「医療」につないだ方がいいと思います。親同士の情報は、かなり説得力を持ちますので、場合によっては、すでに受診したり薬を飲んでいるという子どもの保護者の方から話を聞くと、意外と受け入れられやすいこともあります。

「どんな薬がありますか」という質問を先生方から受ける場合がありますが、私は、「それを知ってどうするのだろうか」といつも思うのです。それよりも、子どものことをよく知り、様子を聞いてくれる医師と知り合うことが大事だと思います。

学校として、先生として必要なことは、薬の名前を覚えることではなくて、それよりも信頼できる医療機関を確保しておくことです。

ただ、情報は「病院名」の段階ではだめで、「何々病院の何々先生」という具体的な情報を持たないといけません。ただ、薬を出すだけの病院もけっこうあるからです。

ようなわけで、信頼できる医療機関とのパイプをつくることが学校の仕事なのではないかと思います。

(花輪敏男元山形県立上山高等養護学校校長)

軽度発達障害の子どもの支援 第8回

「ジュース買ってこい」と言われるのがうれしい

この間も、このようなことがありました。子は最初、グループの使い走りをさせられていたのですが、本人はうれしかったそうです。自分のことは誰も相手にしていなかった。

同級生も、うち先生も当てにしなくなり、親も見捨てる。

そういう中で、「ジュース買ってこい」と言われるのがうれしいのです。

存在を認められたということですから、裏返しで言えば、彼自身の存在そのものが認められていない生活だったということだと思います。それが、声をかけてもらえてうれしかったので、グループに入っていった。こういう経緯をたどる子は、私が個別に会っている子の中には結構います。

セルフエスティームの育成につながる「できることや得意なことを伸ばすこと」が非常に大事です。ADHDの人が大人になり、社会人としてちゃんとやっているとしたら、きっとできることや得意なことを伸ばすことができたのだろうと思います。

欠点を指摘されて、攻撃されてきたということではなく、その子のよいところを伸ばすということがなされてきたのだと思います。

こういう体験ができる子は非常に少ないのが現実です。このような子どもたちは常に叱責されてきて、失敗ばかりしてきているので、「小さいことでも誉めてほしい」といつも言っています。

しかしながら、保護者の方も先生方も自信を持って「この子を誉めることはありません」と言うのです。「誉めたいのだけれども、誉めることがありません」と言う。このようなところが妙に自信たっぷりなのですが。

しかし、「他の子にとって当たり前にできることが、ADHDの子にとって非常に難しいことだ」と思っていただきたい。

例えば、教室の中で、ADHDの子が座ったまま先生の話を10分間聞いていたとします。それは、他の子にとって当たり前のことで、周りの人は10分では物足りない。40分または50分座って話を聞くのが当たり前です。けれども、ADHDの子が10分間座ったまま先生の話を聞いていることは至難の業なのです。

それができるのはすばらしいことなのです。他の子にとって当たり前にできることが、この子にとっては非常に難しいことだと思えば、誉めることはいっぱいあります。

誉めて誉めて誉めまくってほしいと思います。この子たちは誉められることに慣れていません。誉められると、小さなことでも本当にこの子たちは喜びます。

この子たちはそれだけ誉められたことがないのだろうと思います。

(花輪敏男元山形県立上山高等養護学校校長)

軽度発達障害の子どもの支援 第7回

対応を加えて評価してみること

まだ整理している段階ですが、例えば、「時には教室から出てしまう」という項目があったときに、私は対応を加えて評価してみることをやっています。

例えば、口頭で注意してみる。「席に座りなさい」と言ってみてどうか。3回注意してどうか。それでもだめだったという具合です。「席に座ります」と書かれたカードを出したら座る子もいるわけです。介助が必要な子もいます。

同じように「教室を出る」状態といったとき、教育者の側から対応をいろいろやってみてどうかをみておくと、この子は口で注意しただけではだめで、むしろ何か手がかりとして、カードを用意した方がよいことが分かると思います。

このように対応を加えて評価してみるという方法があります。それから、1年前はどうだったのか、半年前はどうだったのかをみて、ずっと変わりない状態なのか、少しずつ改善が見られるのかを見ていくといいのではないのかと思います。このようなチェックリストの利用が望ましいです。

それから必要なことは、同級生との関係をていねいに見ていくことです。いじめの対象になっていることがよくあります。学級に面倒見の良い子がいたりすると、子をキーパーソンにして支援を考えていくことも考えられます。

また、多動や衝動性の高い子は目立ちますが、そうではなくて、不注意優位型のADHDの子もいます。忘れ物が多いとか集中できないという子は結構いるのです。それは、目立たないので気づかないことがあります。ような子に十分なアンテナを張っていただきたいのです。

もう一つ必要なことは、「本人の得意なことは何か」「できていることは何か」「できかかっていることは何か」ということを調べておくことです。

ADHDの子自身の思いですが、本人も困っているし、何とかしたいと思っているのです。ところが周りからはようには見えません。「いい加減だ」とか、「何も反省しない」とか言われます。しかし、実際は困っているのです。

何とかしたいと思っている。でも、できないでいるのです。

何もやってもうまくいかないとも思っていて、自己評価が低くなっています。

このような子ども自身の思いがある一方で、周りの見る目は「わがまま」だとか、「だらしがない」とか、「勝手だ」と見られてしまうのです。このギャップが非常に問題だと思います。

二次障害に陥ってしまう大きな要因は、この本人の思いと周りの見る目の大きな違いにあります。それが、自己評価が低くなり、気持ちが内側に内側にといくと不登校という形で表れるでしょうし、周囲への反発や反感という形になると、非行という形になるかもしれません。

(花輪敏男元山形県立上山高等養護学校校長)