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インターネットと若者の心理 第4回

ネットゲーム依存とひきこもり(1)

牟田武生

「先生は対戦型ネットゲームに向かないよ。『自分より弱い相手を見つけ、それに攻撃を仕掛け、ボコボコにして相手の持っていたアイテムを奪い、自分の得点を上げていきストレスを発散していく悪魔の心理がある』と、先生が何かに書いていたのを読んだことあるけれど、それはネットゲームの世界のことで現実社会では、相手をボコボコになんて普通はそんなことはしないよ」

「ネットゲームの世界は仮想の世界であって、遊びのルールだからしているだけだよ。現実社会で受けた様々なストレスやアメリカがアフガニスタンやイラクなどの弱小国を大義名分もなく、やっけることにダブらせて『悪魔の心理』とか言っているけれど、現実社会をネットゲームの世界(仮想の世界)に持ち込んでいるのは先生じゃあないかな」

「仮想世界と現実社会の区別がつかないのは先生みたいな大人達ではないかな。現実世界と仮想世界の区別がつかないで、ゲームの世界(仮想世界)の興奮や暴力性を持ち込み、ゲーム感覚で他人を殺傷することが危険で問題なのでしょ。‥‥どうなのですか?」とネットゲーム愛好家でひきこもりの若者は言う。

私は一本とられたと思った。

ホラービデオ・テレビゲーム・猟奇小説などの世界にのめり込み、バーチャルリアリティ(仮想現実)から重大犯罪を起すというのが、犯罪心理学では定説だからだ。

「あのー、確かに、僕は現実社会を仮想世界に持ち込んで混同していたかもしれない。大人達の方が、自分達が体験したことのない馴染みが薄い、子ども達や若者の遊びに対して色眼鏡で見ているのかもしれない。僕は現実社会のストレスを仮想世界に持ち込み発散することは問題ないと思うけど、反対に仮想世界で掴んだ感覚を現実社会に持ち込むのが危険で問題なのだと言っているんだよ」

「『遊び(仮想世界)は遊び、現実は現実と区別しなさい』と先生は言っているのではないのですか」

「子どもはバーチャルリアリティ(仮想現実)にのめり込むのは、現実社会での経験や体験が未熟なので、仮想世界と現実社会の区別がもっと付き難いから危険度は高い。そして、ホラービデオ・テレビゲーム・猟奇小説などに比べ、ネットゲームは3Dだから、さらに区別が付き難いとか言っていなかった」と質問は鋭い。

「君の言う通りだよ。現実社会でのストレスを仮想世界で発散することは何にも問題はないよ。映画を見る。お気に入りの音楽を聴き、精神的にその世界で踊る。小説を読み、その世界で精神的にしばらく遊ぶ。現実世界だけれど、非日常性の外国を旅する。これらはみんな現実社会でのストレスを仮想世界で発散し、精神的に癒す行為で、誰でもが精神的な健康を保つためにやっていることだよね。現実生活がしっかり在って、仮想の趣味の世界で遊ぶことは問題ではなくて、むしろ、お勧めすることだよ。これは、ネットゲームでも同じだよ。ところが、反対の仮想世界が主で、そこで影響されたことを現実社会でも区別しないでやってしまうことが非常に危険なのだよ」

「現実社会から仮想世界は良くて、反対の仮想世界から現実社会は問題が起こると言うことですか」

「全てが問題とは思わないけれどね。例えば、多くの西洋美術の絵画や彫刻にある天国や地獄を想像するような抽象的な思考は、仮想世界で想像したり、思考したりするよね。これを現実社会でどのように具体的に表現するかは、天才のミケランジェロでも考えたと思うよ。ネットゲームを作るクリエーターの人も、現実社会にないものをゲームの中に作ることでは同じだとだと思うよ。問題なのは仮想世界と現実社会を区別する意識と表現性の問題なのではないかな」

「分ったような気がするけれど、ネットゲームに依存するのはなぜですか」と若者は真剣に言う。

「それは、今度、一緒に考えましょう」

以下次号

2005.4.1

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ご協力いただいている執筆者の略歴:牟田武生(むたたけお)

牟田武生(むたたけお) 1947年生まれ。72年に民間の教育相談機関である教育研究所を設立し、不登校を含めた 教育問題の相談・援助活動に取り組んでいる。現在、 NPO法人教育研究所(横浜市港南区)理事長。91年に教師・カウンセラー・児童相談所の相 談員等不登校にかかわる専門家を対象にした研修機関として不登校問題研究会を設立。元NHKラジオ「子どもと教育電話相談」相談員、不登校問題研究会代表幹事、元文部省 「不登校の実態に関する調査」検討委員会委員。
主な著書:『ひきこもり/ 不登校の処方箋 増補版』(オクムラ書店)、『すぐに解決!子どもの緊急事態Q&A』 ( オクムラ書店)、『ネット依存の恐怖』(教育出版)など。