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インターネットと若者の心理 第6回

ネットゲーム依存とひきこもり(3)

牟田武生

「現実から逃げたと言うと逃亡者や卑怯者呼ばわりだけれども、人間は生きて いる以上、現実社会から本当は逃れることが出来ないと思うよ」「学校や仕事に行かない。 他の人とも長期間、人間関係を結ばない人のことをひきこもりと呼んでいるけれど、その 人達のことを現実社会から逃げていると、僕は思わない。なぜなら、その人達は学校や仕 事に行きたくても、行かれないほど、人に対する不安な心理があると思うからね。その点 はどう思う?」

「俺は人に対する不安なんてないけれど、リアルの世界はめんどくさいと思う よ。やれ服装がどうだの。先輩や後輩、そして先生との関係、いろいろ気を使うから疲れ るよ。他人といると、話に合わせたくもないのに合わせなくてはいけないし大変だね。確 かに人間関係を引いているとは思うけれど、別に学校に行きたくても、行かれないなんて、 感覚はないよ。学校は行っても、意味がないと思うから行かないだけだよ」

「意味がないってことはどう言うことかな?」

「高校行って適当に受験勉強して、入れる大学を探し入る。社会に出てもそれ ほど役立つとは思わない勉強を4年間し、大学を卒業して契約社員として派遣され、単純 な仕事をするか。営業マンになって、ノルマに喘ぎながら物を売って、仕事をすることを 考えると、そんな人生馬鹿らしく思えて来る。だから、とりあえず高校をやめた。でも、 何にもすることない。そこで、前からやりたかったネットゲームを始めたら、面白くって、 はまってしまったというのがほんねかな」

「高校やめて、アルバイトでもして社会体験をしようと思わなかったのかな?」

「お金に困っていたら、バイトしたかもしれないけれど、金には困っていなかっ た。家にいるからメシは食える。お年玉・誕生日祝い・入学祝い、お小遣いなど、親や祖父 母からたっぷり貰っていたし、金を使う方じゃなかったから、貯金だけで100万超えていた。 ネットゲームは月1500円くらいしか、掛からないからバイトのことは考えなかったよ」

「今の高校生は皆そんなにお金もっているの?」

「遊んですぐ使っちゃて、何時もピーピーしている奴と俺みたいに使わないで溜 める奴の両方がいるんじゃないかな」「顔が広く友達が多くいる。先生が言う人間関係が上 手い奴の方が、良く友達と遊ぶから金がない。だから、バイトをする。俺みたいに人間関係 を少し引いている奴は一人で遊び行っても、ツマンナイから金は使わない。人間関係が苦手 な奴の方が経済的なんだよ。親孝行なんだよ」

「親孝行かどうかは分らないけれど、今、子ども達はそんなに親や祖父母から小 遣いを貰っているんだ」

「家庭の事情によって違いがあるかもしれないけれど、親や祖父母は小遣いを子 どもに渡して、嫌われないようにしている感じだよ。『愛情より金』というのは、子どもの 方が求めているのではなくて、子どもより自分が大切だと思っている。だから、親は子ども に関わるのは面倒だと思う。でも、子どもに嫌われたくないから、多めに小遣いを渡してい るんじゃないかな。これは祖父母達も同じだよ。孫の面倒見ているより、自分達だけで海外 旅行の方が気楽で楽しいと思っているんじゃないかな」

「ひと昔前、安達祐美が『同情するより金をくれ!』というキャッチコピーがあっ たけれど、今に時代は『愛情よりも金あげる』が親の心理なのかな。もしそうならば、子ども の問題というより大人側の問題なんだね」「君の場合は現実社会で愛は得られなかった。でも、 ネットゲームの仮想現実では愛があったと言うことかな。そうだとすると大変難しい問題になっ てしまうね」

2005.6.3

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ご協力いただいている執筆者の略歴:牟田武生(むたたけお)

牟田武生(むたたけお) 1947年生まれ。72年に民間の教育相談機関である教育研究所を設立し、不登校を含めた 教育問題の相談・援助活動に取り組んでいる。現在、 NPO法人教育研究所(横浜市港南区)理事長。91年に教師・カウンセラー・児童相談所の相 談員等不登校にかかわる専門家を対象にした研修機関として不登校問題研究会を設立。元NHKラジオ「子どもと教育電話相談」相談員、不登校問題研究会代表幹事、元文部省 「不登校の実態に関する調査」検討委員会委員。
主な著書:『ひきこもり/ 不登校の処方箋 増補版』(オクムラ書店)、『すぐに解決!子どもの緊急事態Q&A』 ( オクムラ書店)、『ネット依存の恐怖』(教育出版)など。