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インターネットと若者の心理 第9回
ネットゲーム依存とひきこもり(6)
牟田武生
「ネット依存から抜け出す方法か?」
若者は初めて自分がネット依存であることを認めた。 「自分がネット依存であることを自覚することが、最初の大きな山だよ。みんな、 自分の好きなことを悪く言われたくないし、それを否定されると、自分自身が否定 されたような気分になる。そして、とっても悪いことをしているような気持ちになっ て落ち込む。それが嫌だから自分を守るために、相手を逆に否定して遠ざける行動 を自然に取り、結果的に自分を守ることになる。しかし、まわりの人からは自分の 殻に閉じこもって好きなことだけをしているように見える。もし、相手が殻を乗り 越えて注意しても悪意にしか感じなくなる。そして、相手がいえば言うほど、自分 の趣味に益々、固執していき依存の度合いが強くなっていくことが非常に多いんだ よ。だから、自分がネットゲーム依存であることが自覚できれば、最初の山は抜け 出たことになるよ」
「それならば、自分がネット依存であることを自覚できない人はどうしたら良いの でしょうか?」
「自分が依存していることに気がつかないのは自覚の問題。良くないと分かってい ながらも、止められないのは自制心の問題。どちらも依存に陥ると、コントロール 出来ないから依存症といわれている。自覚できないで、状態が悪化していく場合は、 やもうえず、強制的に排除するしか、今のところは方法がないんだ」
「強制的に排除するって、どういうことですか?」
「依存しているものを遠ざけ、ネットゲームができない環境にすることだよ」
「でも、先生はいきなりパソコンを取り上げたり、通信回線の契約解除を親がいき なりすると、本人が暴れ出すから良くないと言っていたではありませんか?どうし たら良いんでしょうか?」
「そこが難しいだよ。そのためにネットゲームをやり過ぎると、ゲームに対して、 自制心や自覚がなくなって依存症になるという予防教育が必要なんだよ。でも、ま だ、日本ではそんなことは、ほとんどいわれてもないから、予防教育なんて、とて も先のことだよね。勿論、ネットゲーム依存の人に対して、 いきなりパソコンや通信回線の契約解除を親が行えば、家庭内暴力が起こらなくて も大騒ぎになるよね。さらに、親との関係性も悪くなるからひきこもりがひどくな るような二次症状も起きることもあるよね。だから、子どもと話し合って、依存に なるから時間制限をするなどの事前の規制をかけながら、どうしても、自覚できな い場合は仕方がないけれど、強制排除になるよね」
「韓国では、予防教育も盛んに行われていて、それでも、ネット依存になった場合 は病院に半ば強制的に入院させて、治療プログラムを行うことになるんだよ。日本 の場合はそんな病院はないから、環境を変える以外方法がない」
「環境を変えるってどういうことですか」
「ネットゲームによって、本来しなければならない会社や学校に行かなくなってし まい。生活のほとんどが、ネットに支配されている状態が続き、自分がネット依存 であるという自覚がなく、自制心もなくなった人は、集団生活しながら、仮想社会 よりも現実社会の方が楽しいことを分からせることができる環境ということだよ」
「自分一人では、なかなか直らないということですね。自分の経験からも何となく 分かります」と若者は答えた。
以下、次回
2005.9.2
ご協力いただいている執筆者の略歴:牟田武生(むたたけお)
1947年生まれ。72年に民間の教育相談機関である教育研究所を設立し、不登校を含めた
教育問題の相談・援助活動に取り組んでいる。現在、
NPO法人教育研究所(横浜市港南区)理事長。91年に教師・カウンセラー・児童相談所の相
談員等不登校にかかわる専門家を対象にした研修機関として不登校問題研究会を設立。元NHKラジオ「子どもと教育電話相談」相談員、不登校問題研究会代表幹事、元文部省
「不登校の実態に関する調査」検討委員会委員。主な著書:『ひきこもり/ 不登校の処方箋 増補版』(オクムラ書店)、『すぐに解決!子どもの緊急事態Q&A』 ( オクムラ書店)、『ネット依存の恐怖』(教育出版)など。