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インターネットと若者の心理 第10回

ネットゲーム依存とひきこもり(7)

牟田武生

「分るけれど、日本にそんな施設あるのですか?」

「残念ながら、まだないよね。でも、これからの時代には必要なことだよ。日本人は他人 から自分がどう見られているか、非常に気にする民族だよね。その分、気を使うからスト レスが溜まる。それを避けるために、現実逃避し仮想社会にのめり込む。しかし、ネット にのめり込むと自制心がなくなり、他人の注意に耳を傾けなくなる。そうなったらネット 依存だよね。自制心が弱くなり、「やめようと思っても」自分ではどうにもならなくなり、 仮想と現実の区別ができなくなる。そのような状態になったら、辛いけれどストレスの溜 まる現実生活に戻るしかない。でも、自分の力だけでは戻れないから、家族や他人の後押 しが必要なのだよね。しかし、後押しの方法がないのが現実なのだ。例えば、精神病院の 措置入院の場合も緊急性があり、自傷多害の恐れがない時以外は不可能なんだ。人権が守 られていると言えば、それまでのことだけれどね。ネット依存の人達は自殺するとか、殺 人事件を起したり、現実社会で人を殺したり、暴力事件を起したりは普通しない。ネット ばかりしているから強制的に入院や措置入院はない。そこが、問題だといえば問題だよね。 ネット依存を理由に入院させられた話は今のところ聞いたことがないからね」

「それでは現実的には環境を変えることは、難しいことではないですか?」とネット依存 の若者はいう。

「そうだよね。まだ、日本は韓国のようにネットが原因で傷害事件や殺人事件などが、頻 発して起きていないから大きな問題ではない。この問題は社会的にまだ整備されていない 状態だよね」

「じゃあ、どうしたら良いのですか?」

「ネット依存の原因はチャットの仲間同士の頼りあい、助け合いにあるよね。そこに居心 地の良さを感じるし、自然に連帯感も強まる。しかし、ゲームの中で一緒に行動するなど の約束を守れないと仲間に見捨てられてしまうのではないかという不安が常にある。まし て、現実の社会で友達がいない多くのネット依存者達は、ゲームの中の仮想社会で友達や 仲間を失うと、ひとりぼっちになってしまう。そうすると、こころの居場所がどこにもな くなってしい。仮想のゲームの世界からますます抜け出れないことになる。そこで、本人 にとって、現実社会の中で少しでも安らぎが得られる関係性の人がいるところで、しかも、 ネット環境が整備されていない。例えば、田舎のお婆ちゃんの家にしばらく行って、ネッ トゲームの世界のキャラ仲間から消えることができ、さらに、現実世界の人間関係も良い ものだと、感じる所があればベストだよ。そこに、家族の人が本人を説得して連れて行く ことが大切だよ」

「そんな環境がない人はどうするのですか。また、僕の場合もそうなのだけれど、先生が さっき言っていたように、ネット依存になると他人のアドバイスや意見を聞かなくなるっ て言っていたでしょう。だから、家族の人が説得するって言っても、どうやってするんで すか。現実的には非常に難しいことだと思うのですが」ネット依存の若者は言う。

「ウーン、そうだよね。これを現実的に実行するには難しいよね。小学生なら親の力が強 いから何とかいくかもしれないけれど、中学生になると確かに難しくなるよね。まして、 高校生や大人だとどうにもならないかなー。困ったな!」

以下次号

2005.10.7


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ご協力いただいている執筆者の略歴:牟田武生(むたたけお)

牟田武生(むたたけお) 1947年生まれ。72年に民間の教育相談機関である教育研究所を設立し、不登校を含めた 教育問題の相談・援助活動に取り組んでいる。現在、 NPO法人教育研究所(横浜市港南区)理事長。91年に教師・カウンセラー・児童相談所の相 談員等不登校にかかわる専門家を対象にした研修機関として不登校問題研究会を設立。元NHKラジオ「子どもと教育電話相談」相談員、不登校問題研究会代表幹事、元文部省 「不登校の実態に関する調査」検討委員会委員。
主な著書:『ひきこもり/ 不登校の処方箋 増補版』(オクムラ書店)、『すぐに解決!子どもの緊急事態Q&A』 ( オクムラ書店)、『ネット依存の恐怖』(教育出版)など。