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子どものこころを開くこんな一言 第1回

給食中の出来事

池島徳大

ある小学校五年生の給食中の出来事である。ある男の子がB子に詰め寄っている。

A男:おい、残すなよ。全部食べろよ。(と、同じ班のB子を責めている)

B子:・・・・。(何も言えずうつむいている。B子は食の細い子で、よく残す子である。)

A男:食べろよ。全部食べろよ。

B子:(か細い声で)半分だけ頑張るから、残してもええやろ・・。

A男:いや、全部食べろ。残すな!。(この時、同じ班のC子が助け船を出した。)

C子:A君、この前、自分のきらいなものが出たとき、A君も残してたやんか。

A男:あのときはしんどかったんや。今日のおかずは誰も残すな!

B子:・・・。(ますます困った顔になる)

(そのとき、様子を見ていた担任の先生が助け船を出した。)

担任:ちょっとA君。今日の給食、自分の好きなおかずとちがうのかなあ。
特に、このフライ、大好物やから友だちが目の前で残しているのを見ると、すごく残念でもったいない気持ちがしたのとちがうのかなあ。それなら、ぼくが食べてあげようかなあという気持ちになったのとちがうのかなあ。

(と、A男の気持ちをくんで話す。すると・・・・。)

A男:そうやねん。これぼくの大好きなおかずやねん。もう一つ食べたいなあ。ああ、欲しい、欲しい・・・。

担任:ああ、そうなんや。このフライもっと欲しかったんやね。

B子:・・・。(少し微笑みながら)じゃ、このフライ、半分食べてくれる?

A男:やったあ!(と、大喜びし、自分のお皿をもってきて半分もらう。そして、おいしそうに食べる。その後は、先ほどの出来事はなかったかのようにニコニコ顔になる)

担任:(にっこりしながら、二人に)よかったね。

A男:うん。(と、うなずく)

B子:うん。(と、ほっとした表情になる)


A男の行動を押さえこむように叱っていたらどうなっていただろう。きっと、A男の無邪気さにもかわいらしさにも出会えなかったに違いない。
C子の助け船はB子の味方にはなったが、A男には通じていない。A男の気持ちをくみ取っていないのである。担任とC子の助け船の差がここにある。
自分の気持ちを分かってもらえたという喜びは、相手を許そうとし、正直になろうとする。「成長エネルギー」を発動させるのである。そんなことを教えてくれる事例は、子どもにじっくりと寄り添えばいくらでも発見することができる。

2005.1.20

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ご協力いただいている執筆者の略歴:池島徳大(いけじまとくひろ)

池島徳大(いけじまとくひろ)1951年生まれ。76年から公立学校で教鞭を執った後、89年から奈良県教育センター指導主事、93年から奈良県教育研究所学校経営係長。97年からの2年間には、国立教育会館学 校教育研究所で主任研修指導主事などをつとめた。00年に奈良県教育研究所教育相談係長、02年からは奈良教育大学教育実 践総合センター助教授(現職) 文部省 「不登校追跡調査」委員としても活躍した。
主な著書は、 「心の教育とカウンセリング・マインド」(編著、東洋館出版社)、「変貌する学校教育と教師」(編著、東洋館出版社)、「いじめ克服の事例と指導・援助の在り方」(土居健郎監修「学校メンタルヘルス実践事典」分担執筆、日本図書センター)など。