TOP > 軽度発達障害の子どもの支援 第6回
軽度発達障害の子どもの支援 第6回
花輪敏男
チェックリストなどを使う場合があると思います。いろいろなものがあると思います が、文科省全国調査の時に用いたものなどはよく使われています。全国調査の結果に ついては、文科省のホームページで見てほしいと思います。
その場合には、血液検査で出てくるような代物でもありませんし、知能テストのよう に数字で表せるようなものではないのです。すべては行動観察なのです。そうすると、 観察の結果は先生ごとにバラバラになります。
例えば、1人の子どもについて、担任の先生にチェックリストをつけてもらったとし ます。養護教諭の先生、学年主任の先生、教頭先生にもつけてもらいました。
同じ1 人の子どもなのに、その結果はみんな違うのです。行動を見て判断しますので、基準 が違うのです。「落ち着きがない」と見る人がいれば、同じ行動でも「元気がある」 と見る人もいるということです。
観察する人によって基準が違うので、複数の目で見てほしいと私は思っています。
「こういうこと言えるよね」「そうだよね」という感じでチェックしてもらうのです。 「よく見られるんじゃない。こういう行動は」というように話をしながら、チェック していけば、かなり正確になるのではないかと思います。
それから、他の問題や他の障害との関連を考えてみる。例えば、ADHDに関する チェックリストだけを用いると丸がつく子がいたとします。その子は実はアスペル ガーだった場合、かなりの項目に丸が付いたりします。これでは、どちらが問題か 分からないのです。
知的に遅れがある場合には、忘れ物が多いとか、授業中、ぼーっ としているということがあるわけです。しかし、それは、ADHDで不注意優位型 の問題ではなく、知的に全体が遅れていて、そういう状態だということも十分考え られるわけです。
このように、ADHDの部分だけのチェックリストで判断するということは危険だ と思います。
ある県で全学級調査を行いました。チェックリストを神経症、ADHD、LD、知 的な遅れなどが出るようなチェックリストを使いました。
そこで興味深い結果が出 ています。それは、ADHDやアスペルガーのいずれか1つの欄に、丸が多くつく 子どももいますが、ADHDの欄とアスペルガーの欄の両方についたりする子が結 構いました。
このようにほかの障害、ほかの問題との関連を考えないと、間違って しまいがちです。ADHDのチェックリストだけを用いて、まるがいっぱいついた からADHDではないかと捉えるのは少し早すぎると思います。
2005.10.28
ご協力いただいている執筆者の略歴:花輪敏男(はなわとしお)
1950年生まれ。小学校教諭(言語障害特殊学級・情緒障害特殊学級担任)、指導主事、
教頭を経て、平成12年より国立特殊教育総合研究所情緒障害教育研究室長。平成16年度より
同研究所教育支援研究部総括主任研究官。平成12〜15年度
文部科学省特殊教育調査委員。他
に神奈川県横須賀市不登校対策検討委員会委員長、石川県金沢市特別支援教育指針検討委員
会特別委員、横浜市特別支援教育推進検討会議委員などを歴任。現在、山形県立上山高等養護
学校校長、文部科学省
「不登校・ひきこもり対策検討会」委員。
専門は情緒障害(自閉症・ADHD・不登校・緘黙・チックなど)。主な論文・著書:『LD・ADHD・高機能自閉症の子のガイド』(2005年東洋館出版)、 「特別支援教育推進のための具体的取り組みQ&A」(2004年『特別支援教育実施のガイドライン』明治図書)、『特別支援教育における養護教諭の役割』(2004年第一法規)、 「高機能自閉症の児童生徒への対応」(2004年『教職研修』教育開発研究所)、 「対談:花輪敏男+牟田武生 〜不登校・ひきこもりをめぐって〜」(2002年『子ども緊急事態Q&A』オクムラ書店)